【イベント実施報告】鎌倉アルプスと紅葉谷

朝の凛とした空気の中、鎌倉アルプスを目指す参加者が、北鎌倉駅に集合しました。目の前の木ではタイワンリスが3匹ほど忙しく動き回る姿が見えました。これも今では鎌倉らしい光景なのかもしれません。5~6名の班に分散して早々に出発しました。

最初に訪れた鎌倉五山第一位の建長寺では、樹齢760年といわれるビャクシンの古木がちょうど実をつけていました。石垣に張り付くような葉をしたヒメイタビ、縮こまって冬をやり越す姿のイワタバコ(ケイワタバコ)は「しわしわで面白い!」「こんなに硬いの?」などと一部では人気者(草?)になっていました。一見似ているツルマサキ、テイカカズラ、イタビカズラの違いも発見しながら観察を続けました。テイカカズラの袋果はすでに枯葉色をしてわかりにくいのですが、次々見つけ出せる羨ましい目をした参加者が多かったです。

建長寺内部の最高地点へ、250段ある石段を少し気合を入れて一気に登り上げました。薄く雲のかかった富士山をはじめ箱根外輪山の大展望を目の前にすることができて、喜びの声があがりました(写真は下見時のものです)。

スダジイ、タブノキ、ヤブツバキの花、ヤツデの花、フユイチゴ赤い実などがありました。随所で鎌倉石(凝灰質砂岩)を穿って掘られた「やぐら」(横穴式の墓や供養堂)が見られました。鎌倉時代から桃山時代にかけて、平野部の限られた鎌倉ならではの人々の知恵と工夫によって生み出された土地利用。その歴史を今なお物語っています。この石は軽石が混ざった砂岩からできているせいか、とても足裏の当たり具合が優しく感じられました。

鎌倉市最高地点159.4mの大平山に到着、ここは鎌倉市内や海が一望できる場所です。上空をトンビが舞う中、一段下の広場で昼食をとりました。ここではいつも元気な地元の子供たちが遊んでいる市民の憩いの場となっています。

「天園」のお茶屋さんの横を通過し、いよいよ紅葉で名高い紅葉谷(獅子舞)へと降りていきます。眼下に紅葉谷の赤い色が目に飛び込むなり「見ごろに来れてよかった!」と喜びの声が聞こえました。獅子舞の苔むす「獅子岩」付近から見上げる紅葉がとても綺麗で感動的。しばらく時間が止まったような感覚に陥り、しっとりとした谷合の空気に包まれていました。

二階堂川沿いを進んでいく途中では両側からの岩壁が迫力満点です。ノコギリシダや冬に胞子をつけるリョウメンシダの胞子を参加者が発見しました。ちょっとカサカサ感があるホウライシダは「かわいい!」「アジアンタムの仲間ね」などと言いながらその感触を楽しまれました。

この後は平たんな市街地で歴史探訪をしていきます。源頼朝の建造した鎮魂寺院の遺構「永福寺」、護良親王が祀られている「鎌倉宮」、「源頼朝の墓」(法華堂)、最後に訪れた「鶴岡八幡宮」では2010年3月に強風で倒れた大銀杏の幹の一部が残されていて、あとを引き継いだイチョウの木が3本ありました。大銀杏のあった場所では4mを超える立派な若木が、黄金色の葉をつけていました。

若宮大路の真ん中の一段高くなっている「段葛」は今で言うとファッションショーのランウエイみたいです。鶴岡八幡宮の参道として当時から整備されていました。両側が食糧生産の田んぼだったことや、山の上までの土地開発をしたことで土砂災害の頻発したために、道を守る必要性からのかさ上げです。今は華やかなお店が軒を連ねている若宮大路で想像もつきませんが、狭い平地で暮らす人々の知恵と工夫が生み出したものだったのですね。二の鳥居から振り向くと今日歩いた鎌倉アルプスの稜線が見えました。好天にも恵まれて、動植物、人が織りなす古都鎌倉の自然の姿をみなさまと楽しむことができました。

「いつも見ている東京近郊とは少し違う植物たちがいることがわかった」「紅葉真っ盛りを楽しんだ」「ヤブツバキとサザンカのちがいがわかった」「ヤブツバキに残るメジロの足跡を初めて見た」「歴史の解説がよかった」「落ち葉のステンドグラスがよかった」「今までは花しか見えなかったけれど、枯れ色の植物の面白さがわかるようになった気がする」「鎌倉も箱根もまた企画してほしい」「何度も歩いた鎌倉アルプスがこんなに植物が豊富なことを初めて知った」「いい写真が撮れた」「完歩できるか心配だったが歩けうれしい」などの感想が寄せられました。
また久しぶりのハイキングで、今回見た関連の場所へ訪れたいという想いを抱かれた方や、グループで和気藹々と話をしながら歩くことの楽しさを思い出された方など、コロナ禍のなかでも少しづつ以前の生活を取り戻そうとされるきっかけになったという感想も聞かれました。私たちとしては、とても嬉しいことでした。

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